2016年09月23日

岸本葉子「週末介護」

穏やかではあるが認知症の父の介護を家族とともにすること5年間。
父が逝き1年して書かれたこのエッセイには、父の老いの変化とそれへの覚悟、日常生活の支援の方法、家族との連携などたくさんの経験が書かれている。
物書きという自由業の時間の遣い方は自由業だからこそのやり繰りが必要となるのだが、岸本さんは自分の住まいの近くにローンでマンションを買うことでそれを解決。
歩いて10分という距離でできる介護生活を始めることとなった。

恵まれている方だと思う。
介護要員がしっかりローテーションしながら担当できている。
兄、姉、姉の高校生の息子二人、そして岸本さん。誰かが必ず夜、泊まっていた。
この本で初めて知ったのだが、お兄さんという人は地の繋がりのない人で、岸本さんが成人して家を出てから養子になり、ずっと数十年お父さんと暮らしてきたそうだ。
それゆえの気兼ねが最初はあったものの、このお兄さん、じつに良い人でお父さんのことを第一に考えケアしている。
これはなかなかできることではない。他人が他人にできる優しさの良いお手本だ。

ここに書かれているのだが、年寄りは転ぶ。
段差や物につまづいて転ぶのではない。何にもないところで突然ドタッと転ぶのだそうだ。
だから一人では置けくて、いつも誰かが傍に居る必要がある。
その時に「こうしてほしい」と柔らかい言葉で言っても、普段は穏やかな父が断固、拒否する。それはおそらく、介護する人間の「強制」を感じるからで、強制されることがイヤなんだろうな。
どんなに言葉が柔らかくても、介護される側は敏感に察知してしまうのだ。

歳を取ると、あれはどういうわけか風呂嫌いになるんですね。そして着替えをしなくなる。
岸本さんはある日お父さんの来ている服を見てギョッとした。食べこぼしなどで汚れたカーディガンを着ていたからだ。
以来、散歩に出かける時などのためにできるだけこぎれいな格好をさせることに。
けれど介護する方はだんだんと、濡れてもいい服、汚れてもいい服を着るようになったとか。。

不思議だったのは介護保険を使うのがずいぶん遅かったこと。
兄や甥っ子二人の男手があったとしても、もっと早い段階から介護保険を使ってもよかったと思う。
じっさいに岸本さんも、ケアマネージャーから教えてもらう介護用品とか介護の仕方など、大いに役立つことを知り驚いている。
ケアマネはプロだもの。介護の知恵の宝庫だ。
認定を受けたところ、「要介護3」が出た。
もっとも介護する側とされる側には相性があるし、そもそも他人が家の中に入り込むのを嫌がる人だっているから難しい。
私の経験からいうと、優秀なケアマネさんは本当にスゴイし、なにがスゴイってその知識もだが、本当に本当に親身になって行動してくれたことだった。それがどんなに心強かったことか。
介護は先が見えないことが多い。誰かが「終身刑になったみたい」と書いていたけれど、そういう感じはわかる。
希望が見えないのがなによりつらいし、寄り添ってくれる人間がいないとなおつらい。
仕事とはいえ、ケアマネさんの寄り添いに私は今でも大いに感謝している。

介護中、漂白剤ワイドハイターにどれだけ助けられたかという文章に、介護の現実をわかる。
洗うだけでは「シモ」の匂いは取れない。漂白剤が環境に悪いと罪悪感を抱えながらも使うしかない。
曽野綾子だったか、彼女も母親介護の時に、部屋がタイルかアルミかなにかで出来ていて部屋中をホースの水できれいにできるなら。。と書いていたけど、切実な問題だ。

在宅での介護をしようという人にこの本、お勧めです。
これほど恵まれている条件は参考にならないかもしれないけれど、日常生活のあれこれには教えられるものが多かったですよ。
posted by 北杜の星 at 07:57| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | カ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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