2017年01月04日

保坂和志「地鳴り、小鳥みたいな」

新年初めてのブログを大好きな保坂和志で始めらるのは、とてもうれしい。
この内容が新年にふさわしいかどうかは別として、保坂和志の小説の根底にある彼の幸福論は、はじまりの時にはふさわしいと思う。

短編集である。
いつも自分と等身大の主人公を描く作風は、ここでも変わらない。
本人そのままの名前で登場することもそうでないこともあるが、周辺の人物は実名が多い。

「夏、訃報、純愛」には、若い頃の彼が、「枯れて見える」初老の男性が「純愛」それも肉体の関係のある純愛をしていると本人から聞き及び驚く話。
まだ20代の若者からしたらそれは、ほとんどあり得ない、ことだった。
彼は男性から「保坂さんは口が堅そうだから」と告白されたのに、同僚にすぐにそのことを言いふらしている。
(保坂さん、困ったもんですね。保坂さんには秘密は漏らさないように)。

表題の「地鳴り、小鳥のように」では、これも保坂さん自身としか思えない主人公が「不倫」の相手と一緒に、山梨の母の実家付近に旅行をする話しで、えーっ、保坂さん、こんなこと書いて奥さんには大丈夫なの?と心配になるのだが、その奥さんは知りつつも騒がずというスタンスをとっているようだ。
笛吹川と釜無川が合流して富士川になるあたり、、というフレーズが何度も何度も繰り返される。
まるでブレッソンという古いフランス人監督の映画を観ている気持ちになる。(ブレッソンは映画のなかに、何回も何回も、例えば主人が店のドアを開けるというようなシーンを挟む)。
彼らが山梨に旅行したのは数年前の大雪の1週間前。よもやあのような大雪になるとは想像もしない、若い女性とのつかの間の幸せな旅行は、何かの予兆なのか。
(あの大雪、山梨県は1週間ほど除雪できなくて物資が届かず、陸の孤島となったのだった。我が家も6日間坂下まで出られなかった、ただ停電にならなかったのと、食料がたっぷりあったのが救いだった。あれを教訓に、山梨県は除雪車をたくさん購入、各集落で使えるようになっていると言うが、今年は大丈夫だろうか?)

「キース・リチャーズはすごい」、保坂が友人の湯浅学から、ストーンズのキース・リチャーズの「crosseyed heart」のアルバムはすごいと教えてもらい聴くと、なるほどこれはスゴイものだった。当時彼は外猫が行方不明で毎日寒空を探し回って気弱になっていた。
これまでもずっとロックを聴き続けてきて、またフリージャズやクラシックのドビュッシーなどにも夢中になったが、自分の人生にロックがあって本当に良かったと言う。
そう、私もロックが大好きなので、この感じは本当によくわかる。
ロックを聴き始めた頃、40歳を過ぎた人間がロックをするなんて想像もできなかった。ストーンズは今や70をとうに超えている。しかもまだバルバルの現役だ。
これを読んで早速、crosseyed heart、買いました。なるほど「キース・リチャーズはすごい」!
全然衰えていない。
私はビートルズより断然ストーンズ派なのだが(ブルースが好きだから)、ストーンズはキースでもっているとかねてより思っている。ミックはあれで案外、ビジネス的なところがあるけれど、キースは本物のロッカーだ。
昨年発売されたアルバムだそうだが、保坂さんのように毎日聴きたい。

もう一遍の「彫られた文字」は割愛します。

保坂さんももう60歳になる。
枯れたかどうか知らないけれど、この短編集にはどことなくセクシーな空気が漂っている。
枯れたくない、の願望なのだろうか?

いつか彼fが「幸せとは、江ノ電の駅のホームのベンチに座ってぼんやり山を見て感じるもの」という意味のことを書いていたが、現在はその駅のそばに高い建物が建ってしまって、山が見えなくなっているとか。。
でも保坂さんのことだもの、きっと、同じような幸せはそこかしこに見つけるはずだ。
そしてそこに猫がいればなおのこと、幸せは増す。
私はそんな保坂和志という作家を心から信頼している。
posted by 北杜の星 at 07:46| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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