2017年07月05日

佐藤正午「月の満ち欠け」

佐藤正午という作家はにくらしいくらい巧い。
ミステリーのような構成で「次はどうなるんだろう?」「最後はどこに着地するの?」と、頁を繰る手がはやくなる。
今回の「月の満ち欠け」もそうだった。
胸をわくわくさせならがら一気呵成に読み終わり、ふぅっと一息ついた。

信じる人もいれば信じない人もいる「輪廻転生」を描いている。
(ちなみに私は信じています)。
輪廻転生は何のためにするのか?
それは「想い」を遂げるため。死んだ後も残る愛の想いを成就させるため。

初老の男性、小山内は青森八戸から東京に出てきて、一人の少女とその母に会う。
少女は小山内のことを、それまで一度も会ったことがないにもかかわらず、よく知っていた。
彼の娘瑠璃のことも知っていた。
瑠璃は18歳のときに母と共に交通事故死していた。
瑠璃は小学2年生の時から、知るはずもない歌謡曲を歌ったり、難しい和歌をそらんじたり、突是独りで高田馬場まで電車に乗り出かけたりしていた。
まるで何かに導かれるように。
やがてその謎が少しずつわかってくる。
瑠璃は瑠璃という女性の生まれ変わりかもしれないと。

四代の瑠璃と彼女たちをめぐる相関係は複雑で、こういうのに弱い私にはちょっと大変だったけど、めぐりめぐってのラストでは、面白い小説とはこういうことなんだと堪能できた。
佐藤正午は昔から乱作はしない作家。エッセイは別として小説はていねいに仕上げる。
「身の上話」はベストセラーとなったが、本来は地味なひとだ。
私はあ彼のどこかアウトローっぽさが結構好きで、サラリーマン的でない主人公の小説に惹かれている。
このような輪廻転生をテーマにするとは思いもしなかった。ナイス・サプライズです。

「欠けた月が満ちるとき、喪われた愛が甦る」と帯にあるけでお、愛が甦るまでには4代かかる。。
愛も甦るけど、怨も輪廻転生で甦るとしたら、こわっ、ですよね。
私の夫は「生まれ変わっても君と一緒になりたい、と言ってやればいいんだよ、生まれ変わることなんてないんだから」と言ってるけど、いえいえ、人は生まれ変わるものなのです。
どうするの?本当にまた一緒になっちゃったら?



posted by 北杜の星 at 07:24| 山梨 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする