2017年07月12日

磯木淳寛「小商いで自由にくらす」

「思いを優先させたものづくりを身の丈サイズでおこない、顔の見えるお客さんに商品を直接手渡し、地域の小さな経済圏を活発にしていく」。

著者の提案する「小商い」とは、上記のようなもの。
その例として挙げているのが「房総いずみ地域」。
いずみ地域というのは行政区を指すものではなく、千葉の房総半島南東部にあり、茂原、大多喜、いずみ市などとその周辺のことだそうだ。
この地域には都会からの移住者が多い。
様々な経験を経た人たちがこの地で、自分らしく自由に暮らすための「小商い」は、仕事ではあるが、商売というよりも自己表現という印象がある。

自分で作った作品を自分で売る。それは自宅であったり、自宅のそばに小屋を建てて、そこで売ったり。
商品はお菓子、Tシャツ、工芸品、手芸品・・・
女性一人で、夫婦で、友人たちと・・・
これで100%の生活を賄えるかというとちょっと心配ではあるが、少なくとも独立した暮らしが営めることは確かだろう。

この本を読んで、「これって、こことまったく同じじゃん!」と思った。
私が住むのは八ヶ岳南麓。
ここも房総のいずみ地域と同様、山梨県でもあるし長野県でもある、いわゆる「八ヶ岳」と称される地域。
ここに東京や神奈川、あるいは中京方面からの山荘族や移住者がたくさん住んでいる。
軽井沢や蓼科とはまた違う雰囲気のある高原だ。

ここには小さなギャラリーやパンやお菓子を売る店が、それこそゴマンとある。
草餅とシフォンケーキだけの農家土間の店、木工作品やステンドグラスを作って販売するギャラリー、染織の店などなど、石を投げればどれかに当たるというほどのたくさんの店がある。
先日、私たち夫婦は初めてのそうした店でブランチを食べた。
そこは自宅菜園で野菜を育て、その野菜を使って煮込みスープを供しているのだ。テイクアウトがメインだが、小屋掛けのような場所で食べることもできる。
ミネストローネとサンドイッチ、じゃがいものニョッキ、タイ風グリーンカレー、豆カレーなど、どれも安くて美味しかった。
土・日だけのオープンだという。
こんなところが本当にたくさんあるのが、ここ八ヶ岳。
新しい店の情報はすぐにみんなに知れ渡り「もう行った?なかなかだったよ」と口コミで拡がるし、人気商品はスーパーで売られるようにもなったりする。
ハードな社会の縛りから自由を求めてやって来たところなのだから、こちらの会社や組織に今さら組み込まれたくはない。だからといって時間はたっぷりあるし、身体も元気。
それなら何かをしよう、という気になるのは当然で、何かをしているともっと何か、誰かと繋がることができる。


でもこういした店を開くのも利用するのも、山荘族や移住者がほとんど。
地元のひとは行かないし、買わない。
だからそういう「小商い」が地域経済の活性化になっているとは考えがたい。
これから地元のひとたちをもっと取り込んで、一緒に「小商い」が発展していけばよりいいと思う。
それがこのあたりのこれからの課題のような気がする。

posted by 北杜の星 at 07:49| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする