2010年11月21日

綿矢りさ「勝手にふるえてろ」

ヨシカはある会社の経理部に勤める26歳の女性。
処女である。
彼女は同じ会社の男性から、付き合ってくれと言われている。
しかし彼女には中学生のときから想いを寄せている「イチ」という男性がいる。
イチとはほとんど話をしたことはない、つまり片想い。
イチと二の間で揺れるヨシカ。
それは夢と現実のせめぎ合いでもある。

綿矢りさは史上最年少で芥川賞を受賞した。もう9年前になる。
大学生だったこともあるのか、作品数は多くない。
受賞以前の「インストール」、受賞作の「蹴りたい背中」そして受賞後の「夢を与える」。
正直なところ、どの作品も私には退屈だった。
他愛もないことがらが、グダグダと書かれているという印象で、苛つくこともあったくらい。

この「勝手にふるえてろ」も読み始めは同じように感じた。
でも読み進むうちに「いや、待てよ」という気にだんだんなってきた。
ヨシカは26歳にしてはあまりに未成熟。その幼さが無邪気さ丸出しの文章で描かれている。
これはひょっとして完璧に意図されたものではないのだろうか?
もしそうだとしたら、これってスゴイ小説かもしれない。
それともこれが、綿矢りさという作家の「天然」なのか?
どっちにしてもあなどれないと、思わせるものがこの「勝手にふるえてろ」にはある。

ヨシカの中で十数年間純粋培養されたイチへの恋心。
二に対する客観性。
この対比がとてもおもしろかった。
贋妊娠の顛末にはリアリティがなくて、あんまり感情移入はできなかったけれど、ラストへのもって行きかたは悪くない。(賛否分かれるところだろうが)。

4作目でようやく、私、綿矢りさをつかまえたような気がする。
もしかしたら、これまで退屈だと読み飛ばした中に、見落としていたものがあるのかもしれない。
だってそうじゃなかったら、芥川賞の受賞はありえないよね。
やはり選者の先生方は、見る目があるのかしら?
posted by 北杜の星 at 08:21| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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