2011年04月18日

東直子「耳うらの星」

「ゆずゆずり」「薬屋のタバサ」など最近では小説にも力を入れている東直子。
独特の雰囲気があって私の好きな作家だ。
けれどこのエッセイを読むと、あぁやはり彼女は歌人だなと、あらためて思う。
エッセイの最後には、歌が一首あって、しみじみとしたりクスリとしたり・・
十年という長い時間の中の文章を集めたものなので、彼女の軌跡がよくわかる。


転校生だった幼い頃の話、子供たちのこと、家庭での日常、日常の中の孤独、そして歌詠み。
静かな語り口が、かえってしっかりとした決意のようなものを感じさせる。
小説を読んでもエッセイを読んでも、なにか芯からは落ち着けず、気持ちだけが上滑りをしている大震災後の今、これを読んでいる間じゅう、私はこういうのを読みたかったんだと思った。
普通の生活にあるふとした瞬間のかけがえのなさ。
知らず知らずに続く毎日の暮らし。
それらを歌詠みとして切り取る、ちょっとした緊張感。いいエッセイ集だった。

このなかに東直子が塚本邦雄の未亡人からプレゼントされた「毛玉茶」が出てくる。
塚本邦雄は孤高の、私の一番好きな歌人である。鋭い、怖いような歌を詠む人だった。
「毛玉茶」と彼女がその紅茶のことを呼ぶのは、茶葉が小さな丸い粒だから。
ケニアの紅茶で、新芽を人の手によって小さく揉むのである。恐ろしく手間がかかる。
私は紅茶をミルク・ティにして飲むので、濃いこのケニア紅茶のファンなのだ。
でも私たち夫婦はこれを「ハナクソ紅茶」とひそかに呼んでいる。毛玉にも見えるが、大きなハナクソにも見えるんですよ。
杉並に住んでいた頃は、自然食品店で求めていたが、八ヶ岳に住まいを移して困っていたら、近くにできたAfrican Art Museum のショップで売っているのを発見。
インドやセイロンの紅茶も、特にダージリグのファースト・フラッシュは薫り高くて美味しいけれど、このケニア紅茶やスマトラ紅茶は気取らず何煎でもガブガブ飲めて、別のうれしさがあります。
posted by 北杜の星 at 07:04| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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