2011年04月21日

桜木紫乃「硝子の葦」

桜木紫乃は以前「氷平線」という短編集を読んだのが最初。
北海道を舞台に男と女のことが、淡々と乾いた文章で描かれていて、なかなかよかった。
人間の書き方やディテールが私好みだった。
この「硝子の葦」は、彼女の新作とのこと。

ミステリー仕立てである。
母の愛人と結婚した節子は、ラブ・ホテルを経営する夫の庇護を受け、経済的な余裕と好きな短歌で歌集を出してもらうなど、それなりの暮らしをしていた。
節子は結婚前に勤めていた会計事務所の所長とも関係を続けていた。
彼女はそのことになんの罪悪感も持っていない。夫がそのことを知ったとしても傷つくとは考えていないからだ。
節子という女性はいつも醒めていて、なにごとにも深く感情を沿わせないところがある。
物語は、釧路の近くの小さな港町の飲み屋街で起こった爆発から始まる。衝撃的なオープニングである。

節子、節子の母、夫、夫の娘、ラブ・ホテルの従業員、会計事務所の所長、短歌の友達とその娘・・
登場する人物はそう多くはない。
だがみな、なんというか、不穏な空気を身にまとっている。
それと、これは私の印象なのだが、みな「所有欲」というものが希薄なような気がする。
そんな自分が、自分でも驚くような自分を発見し行動してしまう、その怖さ。
静かな冷たい怖さがここにはある。

最初の北海道の夏とラストの北海道の雪のシーンが、なにかを暗示しているような・・
このあとどうなるんだろうと、本を閉じたあとも、気になって気になって仕方ない。
極上のエンターテイメントとして、とても楽しめた。
それにしてもこれだけの文章を書く桜木紫乃という作家、どうしてあまり知られていないのだろうか。
この作品は、もし映画化されたら、キャスティングはどうなるかと想像をめぐらす楽しみもあった。
posted by 北杜の星 at 07:31| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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