2011年06月23日

桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」

ハズカシながら桜庭さんの名作「赤朽葉家の伝説」を今ごろ読んだ。
誰に聞いても「よかった」「面白かった」という評判なのに、読むチャンスは何度もあったのに、どういうわけか読んでいなかった。
変にベストセラーだと、へそ曲がりの私は読む気をなくすことがあるし、読みそびれて時間が経つと「今さら・・」と手を伸ばさない。
だけどこれは、いつか読もう、いつか必ずと常に思ってきた作品。
やっと、読めました。

噂に違わず、面白かった!
ストーリーはご存知の方も多いだろうが、祖母・母・娘と三代の女性を描く大河小説。
実は私は大河小説、女三代記という小説が苦手なクチで、そいういう小説によくある苦労話の先が見通せる感じが嫌いなのだ。
どんなによくできたお話でも、「はい、はい、わかりました。そうでしょうとも」って感じで、実に意地の悪い読者なのである。
だけど、これは奇想天外なぶっ飛び方をする小説だった。どうしてこうなるの!という驚きの連続で全然あきない。
なんというユニークな小説なんだろう。

ぶっ飛ぶといえば、最初から飛ぶ碧眼の男が未来視される。
未来視するのは、祖母の万葉。山の民に置いてゆかれ、鉄工所に勤める若き養父母に育てられ、その鉄工所の経営者である名家「赤朽葉家」に嫁いだ。
字も読めぬ万葉を「嫁」にと決めたのは、姑だった。
そして万葉の娘、小説の語り部の「わたし」の母は漫画家。なんとも波乱万丈、怒涛のごときの短い一生。
第三章の「私」が現代の娘らしく、もっとも小粒で主人公としては頼りない存在。この「わたし」が、祖母の残した謎を解く・・とここにきて桜庭さんおとくいのミステリー仕立てとなっている。
そのほかにも登場人物がそれぞれの役割を強烈に果たしている。

戦後からの日本の歴史、経済発展とバブル崩壊、地方都市の企業としての生き残り方・・さまざまな角度から壮大に展開するこの物語。
これはやはり桜庭一樹という作家の「初期の代表作」だろう。
小説とは物語を読むということ、その醍醐味を思いっきり与えてくれる作品だ。

桜庭一樹は故郷鳥取に部屋を借りて、数ヶ月こもりっきりでこれを書いたという。
伯耆の国の空気が伝わってくるのは、そのためだと思う。山陰の、あの山もあれば海も近い、湿った雪の降る土地。だけど朝鮮半島や大陸は思いのほか近い。
私は中国地方(山陽側だが)に長く住んで、山陰もよく知っているが、中国地方の山間部は、標高はそれほど高くないのに結構山深い。
おどろおどろしい言い伝えには事欠かないところだ。(岡山の山奥は、横溝正史の世界です)。

「赤朽葉家の伝説」の第二弾である「製鉄天使」は先に読んだのだけど、前後関係がわかった今、もう一度読んでみようかと思う。
posted by 北杜の星 at 07:44| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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