2011年07月28日

井上荒野「ハニーズと八つの秘めごと」

9つの短篇が収められている。
このうちのいくつかは、アンソロジー本のなかで読んだことがあった。
作家は文芸誌とかアンソロジーなどに書き下ろし、それらを集めて単行本にし、またそれを文庫化しと、幾度か場所を変えて作品を発表できる。
その間に納得できない箇所に手直しもできるのだから悪くない仕事だ。
我が設計事務所の仕事もそんなふうにおいしいところがほしいものだけど。

肩に力が入っていない作品が並んでいる。
でも井上荒野らしいザラザラ感はちゃんとある。
表題になっている「ハニーズ」は、学生時代からの仲良し4人組のお話。
若かりし頃「ハニーズ」と呼ばれ光り輝いていた彼女達も、今はアラフォー世代だ。
離婚を前にしたり不倫で妊娠したりと、これまでとは違う人生を歩みだす人もいる。
「ハニーズ」に代表されるように「時」とともに変わるなにか。
捩じれる人と人との関係。それが男と女であっても、女と女であっても、また男と男であっても、微妙な変化を作り出す「時」。
それぞれの秘密を抱えて、また相手の秘密を知ったとき、その変化がどう出るか。

ナイン・ストーリーズのうち「泣かなくなった物語」だけは、井上荒野の私小説っぽかった。
作家である父の井上光晴は、女性にもてた男性として知られている。
家庭にその波が押し寄せないわけはなかっただろう。
そうでなくとも我ままな父親だ。
母の気持ち、娘荒野の気持ち・・それぞれの立場から、書く材料はたくさんある家庭だったと思う。
幼い頃の記憶が鮮明に描かれている。

「これが一番好き」という短篇はとくになかったけれど、「犬と椎茸」は短篇として定石どおり巧くできていると思う。
できすぎていて、好きじゃないところはあるけれど。
椎茸を煮る甘辛い匂いがこちらの鼻にまで届くようで、太巻きか煮椎茸がたくさん酢飯に混じった散らし寿司が食べたくなる。
分厚くて大きな「どんこ」って、今はとても高価なものになっているけど、じっくり水で戻して煮含めると美味しい。
でも椎茸は痛風に悪いらしく、私の友人には「椎茸はダメ」という人がいる。
痛風や糖尿病にはなりたくないなぁ。
posted by 北杜の星 at 06:52| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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