2012年11月15日

綿矢りさ「ひらいて」

この綿矢りさ、いいです。
彼女はだんだんとよくなっているような気がする。

普通にお洒落をして友人からも適度に好かれたり男子からモテたりする高校生の女の子。
そんな子がクラスメイトに恋をした。
そう、よくある青春恋物語。
でもこの小説の展開にはかなり驚かされる。

愛は高校三年生。たとえという変な名前の地味な男の子に恋をしたが、彼には中学生のときからの彼女がいることがわかった。
その子は若年性糖尿病を患っている美雪という女の子。みんなの前で自分の腹にインシュリンの注射をしたことで、クラス中から引かれてしまった。
嫉妬にかられた愛は思わぬ行動にでた。
それは自分が間男になること。つまりは美雪と関係をもつのだ。
たとえに告白するも拒絶される愛にとって、美雪と繋がることがたとえと繋がること。そしてそれは美雪やたとえに対する腹いせだったのか・・
しかし美雪とたとえの関係は愛が考えるようなものではなかった。

普通の女子高校生が次第に激情にかられるその勢いが怒涛のごとくスゴイ。
夜の教室に忍び込んでたとえの机から手紙を盗んだり、美雪と寝たり、たとえの家での行為とか、激情を制御できない愛。
計算しているようで、全然計算になっていない。
そこにはただまっすぐな気持ちがあるだけ。
そして迎えるクライマックス。
やがて激情が静まるときが来る。

若いときの恋愛って、結局は自分のことしか考えられないし見えていないもの。
他人から見ると滑稽だったり無様だったりするかもしれないけれどそれでいい。
激情にもみくちゃにされたから、わかることがある。
受け入れること、受け入れられること。
「ひらいて」という最後の言葉が胸に残る。

この小説で印象的だったのが、愛の激しさの対極のような美雪のたとえに宛てた手紙の数々だ。
たとえを深く理解しようとする美雪の心情が淡々とした文章で書かれているのだが、まぁこんなのを盗んで読んだら、ますます愛は敗北感で一杯になったことだろう。

posted by 北杜の星 at 07:20| 山梨 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ワ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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