2014年11月12日

連城三紀彦「小さな異邦人」

ある新聞の書評にこの本が紹介されていて、それに「最後の贈り物」とあるのを見て、「えっ、連城三紀彦って亡くなったの?」と驚いた。
そのことをまったく知らなかったからだ。
まだ60代半ばだったのに。
といっても、私は彼の作品を初期の2.3作しか読んでいないのでとても彼のファンとは言えないのだが、同世代の作家がいなくなるのはさみしい限りだ。

これを読んで意外だったのは彼の小説がわりとドライだったことだ。
「戻り川心中」や「恋文」はもっとリリカルな印象だったのだけど、私の記憶違いか。
ここには8つの短篇が収められているがどれも結末のちょっと突き放される感じが面白かった。
小説の乾き具合が心地よいのだ。
ミステリー、恋愛、不思議な感覚の物語・・
バラエティに富む小説集だ。
そこにはどこか怖さもあって、人間の言葉にならない心の動きが描かれている。

表題の「小さな異邦人」は意表を突かれるストーリー。
8人の子どもを抱える母子家庭に、一本の電話がかかって来た。
「子どもを預かっている。3千万円用意しろ。警察には言うな」と。
しかし家には8人全員の子どもが揃っていた。誰一人欠けていなかった。
それにこの家は貧乏で、身代金などどだい無理。
いたずら電話だと思ったのだが・・
ラストを読めばタイトルの「小さな異邦人」の意味がわかる。

私がハラハラドキドキしたのが「無人駅」だった。
六日町の駅に降り立った水商売風の女がタクシーを拾うところから始まるこの小説は、殺人で指名手配されている彼女の男が、時効直前という設定。
しかしここでも二転三転して思いもかけない結末に。。
また「風の誤算」の噂や風評の怖さがよく描かれている。

さすが、キャリアのある作家だったんですね。
物語の展開の巧みさと文章の確かさは、安定感いっぱい。
このような作家がいなくなったのはさみしいですね。
これまでもっと読んでいればよかったと悔やんでいます。
posted by 北杜の星 at 07:37| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ラ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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