2015年01月03日

ロジャー・パルバース/四方田犬彦「こんにちは、ユダヤ仁です」

今年最初のブログを何で始めようかと少々迷った。
年末年始に数冊の本を読んだのだが、これぞ新年にぴったり!というのはなかった。
なので、一番面白かったのを選んでみた。

対談集である。
パルバー氏は1944年NY生まれ。ロシアとポーランド系ユダヤ人。
ベトナム戦争に反対しアメリカを離れ、ワルシャワ、パリ、オーストラリア、日本と移り住み、まさに「流浪の民」そのものの文学者、劇作家、演出家。
一方四万田犬彦はイスラエル滞在経験を持つ。
この二人がユダヤ人とはなにか、ユダヤ文学とはなにを指すのか、日本とイスラエルの共通項などについて語り合う。
タイトルは「こんにちは、ユダヤ人」という軟らかいものだが、二人の高等ユーモアは随所にあるもののこれはかなりディープな対談だ。
歴史的文化的なパルバー氏の話がとにかく興味深く、知的好奇心を満足させられる。

欧米人に比べて日本人はユダヤ人のことをほとんど知らない。
知らないにもかかわらずイメージは持っている。
そのイメージはどこから来たのか?

ロシアのユダヤ人居住区からどのようにして彼らがヨーロッパ各地に散らばったかの歴史がこの本により理解できた。
いろいろ書きたいことはあるのだが、書いているとキリなく長くなるのでとにかく読んでもらいたいのだが、ユダヤ人の定義をちょっと述べると、おじいさんかおばあさんのどちらか、つまり四分の一がユダヤ人ならユダヤ人と認定される。
またユダヤ人と結婚しユダヤ教に改宗すればユダヤ人になれる。アジア人のユダヤ人もいれば黒人のユダヤ人もいるのだ。
これは日本人になるよりも簡単に私には思える。(ほとんどのヨーロッパの国ではその国に住んで税金を払えば国民と認められる。)
ユダヤ文学についてもヘブライ語で書かれていればユダヤ文学。ユダヤ人が書くことが絶対条件ではない。
これは日本文学についても同じではないだろうか。
どこの国の作家であっても日本語で書かれていればそれは日本文学。
反対のケースは、カズオ・イシグロは英文学なのである。

えー、そうなの?と思ったのは、イスラエルという国について。
パルバー氏もイスラエルのことはよく知らないらしくイスラエルに関してのことは四万田に訊ねているのがおかしいが、日本との類似点や相違点の考察が興味深い。
イスラエルには憲法がないそうだ。
これには四万田は、憲法がある日本でも憲法解釈を変えて政治をしようとするのだから、憲法があっても同じだと言っている。

私などどうしてもイスラエル批判のパレスチナ贔屓になってしまうのだけれど、イスラエルのガザやシナイ半島やゴランへの侵攻はやはり国際法に違反している;と思う。
この点ではユダヤ人であってもパルバー氏のイスラエル批判は真っ当ではないだろうか。
こういうシオニズムに反対するユダヤ人もいるのだと安心するし、いわゆるアメリカのユダヤ人、現在世界で大きな権力を持つユダヤ人(これもステレオタイプのユダヤ人像なのだそうだが)だけでなく、リベラルなユダヤ人もいるのだとわかる。

この本で初めて知ったことはたくさんあるが、ホロコーストの意味もここで初めて知った。
ナチスの強制収容所の大虐殺をホロコーストと呼ぶが、ホロコーストとはギリシャ語で「丸焼き」という意味だそうだ。
意味を知ればなおのこと残酷に感じる。

posted by 北杜の星 at 07:58| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ラ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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