2015年05月11日

若本洌「東京ブラックアウト」

同じ作者の「原発ホワイトアウト」はベストセラーとなったが、私は読んでいない。ライブラリーで予約しようとしたらあまりの予約数の多さにおののいて、早々にあきらめた。
こんな田舎ではめずらしい希望数で、多くの人が原発に関心があるのだなと思った。
そしてこの「東京ブラックアウト」、これも借り出すまでにずいぶんと待ってようやく読めた次第。
前作も今作も両方読んだ友人にどちらが怖い?と訊ねたら、「そりゃ、ホワイトよりブラックでしょ」と言われた。

たしかに怖かった。
怖さの理由はこれが完全フィクションではなく、かなりの部分がノン・フィクションであるという点だ。
現役キャリア官僚が覆面で書くからこそのリアリティと、ストーリーの展開が荒唐無稽とは感じられないところも怖い。

フクシマ原発事故からまだ4年、原発は再稼働されようとしている。
もしまた事故が起きた場合の避難計画はかなりズサンなもので、しかもその管轄を各省が押し付け合っている。住民の安全はお題目だけで、じっさいには機能しない計画は自治体に任せようとしているのだ。
九州の仙内原発周辺は過疎地で高齢者の住む家から家には距離がある。車を持たない人も多い。そんな彼らをどうすれば放射能からすくいだせるというのか。

やがて新潟の原発も再稼働された。
そして朝鮮半島からのテロリストが東京を含め広範囲に停電を起こした。
新潟の原発の原子炉冷却のための送電もストップ。豪雪と極寒のため緊急電源供給が不可能となった。
冷却されない原子炉はメルトダウンを起こし・・

読みたくない、想像もしたくないことが書かれている。
それなのに政治家と官僚はなにをしたか?なにをしなかったか?
いや、彼らはもともと国民のために何もしてこなかったのだ。
何かが起こればエクソダス(脱出)するだけ。
彼らは自分たちの利益のために「電力モンスター・システム」のなかでゴキブリのように生き残る・・

嗚呼、日本の官僚と政治家の図式は未来永劫変わりそうもないし、官の縦割り行政も続くのだろうなと、絶望的になる。
そんなこの国において、「あの方」が心底胸を痛め心配し、自分に何ができるかを制約のなかで考えている。
この本の結末は意外なものだったが、もしこの結末どおりのことが起こるとしたら、どうなるのだろう?

山本太郎議員が園遊会で天皇に手紙を手渡したことが顰蹙を買い非難されたが、天皇への直訴状は不可能なことではないらしい。
ちゃんと道があるそうで、その方法が最後に書いてある。
天皇への請願の送付先は、〒100−8968 東京都千代田区永田町1−6−1 内閣官房内閣総務官室

(あきらかにあの播磨屋せんべいの街宣カーと思しきトレーラーが出てきて思わず笑ってしまった。
播磨屋のトレーラーに書かれていることを見ると「右翼」のように見えるが、私はあれは右翼とは違うニュアンスのものだと考えている。どうにもこうにも他に方法がなく、現状を思い余って天皇になとかしてとすがっているだけなのだ。だから本物の右翼から脅かされもするのではないだろうか。
ちなみに私、播磨屋のおせんべいって安くて好きなんですけど、ちょっと注文するのをためらってしまうところ、このところあります。あの街宣カーはちょっと引く。)
posted by 北杜の星 at 07:25| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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