2015年05月26日

ロージャー・パルバース「星砂物語」

ロジャー・パルバースは1944年生まれ。
ハーバード大学で修士号を取得後、ポーランドやフランスに留学。1967年以来ほぽ半世紀を日本で過ごしている。
大島渚監督「戦場のメリークリスマス」において助監督をつとめ、以後は作家、劇作家、演出家として活躍している。

「星砂物語」というタイトルはなにやらロマンティックな恋物語のようだが、全然違う。
パルバースが日本語で書いたこの小説には、平和への祈念が込められている。
時は1945年、日本の敗戦色が濃い4月。
舞台は沖縄八重山諸島の小島、鳩間島。
ほんとうに小さなこの島は昔、カツオ漁でにぎわい鰹節工場があったそうだ。
この島に住む16歳の少女、洋海の書いた数日間の日記がこの小説の核となっている。

16歳の洋海は日本人の父と日系二世の母との間に生まれたアメリカ育ち。兄が一人いる。
日米開戦間近に洋海は父とともに日本に帰還したが、母と兄はアメリカにとどまる決意をした。
父は長崎に行き、洋海は鳩間島で空き家になった家に一人住むことになった。
島の北の岬には洞窟があった。
ある日洋海は海辺でいつものように牛乳瓶に星砂を詰めていたら、一人の若いアメリカ兵を見た。
そしてそのアメリカ兵を日本兵が助けているのに気づいた。
そこには洞窟があり、洞窟の中にはもう一つの洞窟があって、どうやら日本兵はそこに潜伏していたようだ。
日本兵は脱走兵だった。ボブというアメリカ兵も隣の西表島から泳いで鳩間島に着いた脱走兵だった。
洋海は岩淵さんという名の日本兵とボブに食糧や薬を運びこむようになった。。

日記は1945年4月2日から数日間詳細に続いていたが、8日にぷっつりと途絶えていた。
それから何十年も経った2011年、卒論にあの頃の沖縄について書こうとする女子大生が、洋海の日記を手に取り、その日記に疑問を持った。
そこから意外な展開があるのだが、最後の最後にまた驚くべき事実が明かされる。

戦中に「トイレ」という言葉は使わないだろとか、他にも「スムーズ」などという単語が出てくるのには少々違和感を覚えるし、鳩間島の地元老姉妹の言葉が東京の山の手言葉なのにも首をかしげてしまうが、作者がこの小説で伝えたいことは理解できる。
鳩間島のことを知らなかった私には興味深い点がたくさんあって、読んで良かったと思える一冊でした。故井上ひさしも推薦しています。
posted by 北杜の星 at 07:12| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ラ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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