2016年04月27日

和田秀樹「この国の冷たさの正体」

著者の論説にこうも賛同できる本に久しぶりに出会った。
和田氏がこの朝日新書に書く「自己責任」について、私はこのところ腹だ立ってならなかったのだ。
最近とみに騒々しい「自己責任論」って、おかしくないですか?
なにかちょっとした間違いを徹底的に叩く風潮はまるで中世の魔女狩りのようだ。
不倫はいけないことかもしれないが、それは家族の問題であって、あなたに迷惑がかかるのか?と言いたい。
嫌いな政党の政治家であっても、あんな失言がそれほど問題になるのかと鼻白む。
みんな「正義」を振り回し過ぎではないのか?その「正義」が気持ち悪い。
もっともっと追究する大きな相手がいるのに、強者に対してはモノが申せない。
結局は弱者が弱者を叩いているだけ。

生活保護受給者に風当たりが厳しい。
不正受給がいかに悪質かテレビや新聞で報道している。
しかし不正受給者は受給者全体のほんの0.53パーセントなのである。
その他の人たちは生活が窮乏していて、生活保護がなくては暮らせないから受給しているのだ。
もちろん不正受給はわるいことだ。けれどどのようなシステムであってもどこの国であっても、不正を働くものは必ずいる。
それをすべての生活保護受給者に当てはめようとし、彼らが不当にお金を受給しているとの印象を国民に植え付けるのは誰なのか?
しっかり人生設計しなかったからだという「自己責任」で、彼らを誹謗するのは誰なのか?
福祉の予算を減らしたい国家や自治体、それに追従しみんなをミスリードするマスコミだと、和田氏は言う。私もまったくそう思う。
(ちなみに生活保護費(社会扶助費)のGDPに対する割合は、オーストラリア5.6、イギリス5,0に対し、日本は0.6パーセント、「生活保護費で国の財政が圧迫されると言うほど多くはない)。


生活保護受給者だけではない。自殺者、いじめを受ける者、うつ病患者、依存症患者・・
彼らに対しても「自己責任」の言葉が突き刺さる。
しかしもともと国家がこうまで冷たく仲たら、こうした社会問題は軽減されるはずである。
「この国の冷たさの正体」を見たと、つくづく感じたのは、テロの犠牲者に対する反応だった。
日本という国家は真剣に人質になった人たちを救出しようとはしなかったし、国民は「あんな状況の土地に行くからだ」と「自己責任」を追及した。
果ては「国に迷惑をかけるな」とまで言ったのである!
国は何のためにあるのだ?国民一人一人を護るためにあるのではないのか?

日本がこのような冷たい国になったのは、橋本龍太郎政権に始まり小泉政権で本格化したと和田氏は言う。
終身雇用制度、年功序列制度が消えた頃からだそうだ。
競争が激しくなり、それについていけない人たちが弱者となってしまった。
10人いれば1番から10番までの順位がつくのは当たり前だ。7.8.9.10番の人たちは「自己責任」が足りなかったというのだろうか。
誰もが優秀なわけではない。誰もが成功するわけではない。誰もが病気をすることだってある。
なぜそうしたつらさに、気持ちを添わせられないのだろう気亜。
国が冷たいということは、その国民が冷たいと言うこと。そんな国に住んでいると思うと悲しくなる。

和田秀樹氏は精神科医である。
心を病む人たちの病理が社会から発生していることがわかっているからこそ、こういう本が書ける。
彼は問題提起だけでなく、日本画どうすればよいかの提案もここでしているのだが、それには90%賛同します。
この本、777円です。是非読んでみてください。
posted by 北杜の星 at 07:06| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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