2016年05月31日

乾ルカ「花が咲くとき」

札幌に住む小6の大介。
両親は国立大出だからか、それほど悪くはない大介の成績に厳しい。
そんな鬱屈をはらすために、夜になると、隣家の庭の木の花芽を見つけると削ぎ取っている。
隣家には偏屈な老人、佐藤北海が住んでいて、いつもその木の下にたたずんでいる。
ある日、大介が削り忘れた花芽が開花した。
それを見た北海は突如、ボストンバッグを抱えて旅に出かけようとする。
ちょうど両親に叱られ家出を決意した大介は、北海を追うこごにした。。
北海はどこに行くのか?
秘密を抱えていそうな北海の目的はなんなのか?
北海と大介のロード・ノヴェルはこうして始まる。

乾ルカは「夏光」や「メグル」で、不思議な超常的な小説を書いたが、この大介にもちょっとしたそんな能力がある。
それは会う人からの「気配の色」が見えること。
その色で人の思惑や人柄を大介ながらに判断しているのだ。そしてそれは大介を正しい方向に導くことになっている。

時代設定は昭和50年代半ばだろうか。
戦争体験をもつ人たちがまだ多く存命していた頃だ。戦争後遺症から抜け出せない人たちの戦争の落とし前のつけ方の苦しみ。
名古屋、舞鶴、下関、そして長崎・・北海と大介の旅で出会うリュックの大学生、トラック運転手、ストリッパー、包丁研ぎ師。
彼らは大介に大切なものは何かをそれとなく教えてくれる。
そう、これは大介の成長物語でもある。

やはり感動的なのは最終章で、「許す」「許される」ことの意味が描かれている部部分だろう。
北海の正直さがストレートに胸を打つ。
許すことも許されることも難しい。忘れられない事実をにそれができるのは神様だけだ、
人間が出来ないからこそ、神様がその代わりをしてくれるのではないか?

乾ルカの小説はわりと出来不出来がはっきりしていて、こんなの書かないでと思うこともあるけれど、これは気に入りました。
彼女は幼い子を主人公にするのが巧いですね。
好きな作家さんなので次作にも期待です。

posted by 北杜の星 at 07:33| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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