2016年06月17日

町田康「リフォームの爆発」

町田康が東京都心から熱海の山のなかに引っ越したのは、当時飼っていた10頭の猫のためだった。
買ったのは中古の家でかなりたくさんの部屋数があり、茶室までついているもの。それを入居にあたって改築をした。
猫たちのうち何頭かは死んで現在は、猫6頭と犬2頭がいる。
それらすべてが保護の必要のある見るに見かねて飼うことになった犬猫たちだ。
町田康、それ以上に彼の奥さんはやさしいひとで、気の毒な生き物を見過ごすことができないのである。

そして今回、また家をリフォームすることとなった。それも大々的に。
家中に不具合が出たためだ。
まず、人と寝食を共にしたい居場所がない二頭の大型犬のため。
人を怖がる猫6頭のための茶室・物置小屋や連絡通路の傷みによる逃亡と倒壊の懸念。
そして細長いダイニングキッチンで食事をする苦しみと悲しみ。
ダイニングキッチンの暗さによる絶望と虚無。
これらを改善するためのリフォームなんですね。
(この家、ずいぶんとイレギュラーな造りのようで、私に言わせると「町田さん、なんでこんな家を買ったのよ」と言いたくなるんですけど)。

町田康はこれまでも自分でもいろいろ側庭などの工事をしている。
彼のことだもの、すればするほど失敗の穴が拡がり、奥さんからはあきれられ、自分も嫌気がさして不貞腐れることとなる。
ならばプロの職人さんたちに依頼をしよう!と考えたのは正解。まぁ自分で手に負える規模のリフォームではないのだからそれは当然。
でもこれが一筋縄ではいかないのは町田康ファンなら誰もが想像できる。
職人さんたちとのあれやこれやの折衝が大変なのだ。
彼らの一挙手一投足にビビってしまう。でもちゃんと自らお茶出しもしているんです。

でもかなりリフォームというか建築のことを勉強したものと思われる。そうでなければこのような詳細なリフォーム・エッセイは書けないだろう。
もし「リフォーム文学」というジャンルの賞があるならば、これは間違いなしの大賞受賞だ。
まずただのエッセイではなく、本の導入部はエッセイではなく小説といってもいいくらいの構成となっている。
町田康はこれを書くにあたって、新しいエッセイのかたちを作ろうとしたのではないか。意欲作ですね。

リフォーム後のスピンクたちがどう感じているか、それは次の「スピンク・シリーズ」でわかることでしょう。
楽しみです。
posted by 北杜の星 at 07:51| 山梨 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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