2016年07月04日

野中ともそ「虹の巣」

野中ともそを読むのはずいうんとじさしぶり。この作家さんの存在を忘れていた。
彼女の作品には(「おどりば金魚」のようなものもあるけれど)、ニューヨークとかキーウェストとかカリブ海の雰囲気が色濃い。
これは彼女自身がNYに住み、カリブ海を身近に暮らしてきたからだろう。
彼女は「犬のうなじ」であの9・11のテロを扱った作品もあり、あの時あの場所にいた人ならではの臨場感と深い傷が伝わるものだった。
この「虹の巣」にはNYもカリブ海もでてこない。
母としての女の複雑で悲しい過去を描くミステリーだ。

3人の女がいる。
1人は地味な脇役男優と結婚し引退した元有名女優の鈴子。
1人は高校を中退して鈴子の家で働くことになった少女の佳恵。
そしてあと1人はやはり鈴子の家の家政婦になり、鈴子の娘の日阿子を育てる暁子。
3人の女にはそれぞれの秘密があった。。

被害者でも加害者でも、その理由は同じ。
ただ「愛していた」だけだったのに。
ミステリーなのでストーリーを細かに説明するわけにはいかないが、年代を交叉させながら佳恵と暁子それぞれの人生をあぶり出す。
彼女たちの核にいるのが華やかな鈴子だが、彼女にも暗い過去がある。
彼女たちの過去の秘密がやがて一つになってラストへと導かれる。

これ、野中ともその新境地ですね。
これまでとはまったく違う。なぜこれを書いたのかその心情を知りたくなる。

鈴子の家でつくる暁子の料理、彼女の行きつけの干物屋の魚や蕗味噌・・
美味しそうだ。
とくに山口県から仕入れるかまぼこ!そのかまぼこにちょっと蕗味噌を乗せて。。
山口県って瀬戸内海にも面しているけど、日本海にも面している。
その山口の明るさだけではない「暗さ」が、この小説に巧く使われていると思う。

次にどんな小説を書くか、楽しみな野中ともそさんです。
posted by 北杜の星 at 07:45| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ナ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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