2016年08月23日

吉田篤弘「台所のラジオ」

12の短編をゆるやかにつなぐものがあるとすればそれは、台所のラジオ。
人生で足踏み状態の人たちの肩をそっと押してくれるこの短編集には、いつもの吉田篤弘らしいあたたかさがみちている。
台所のラジオというなんだかレトロっぽい雰囲気にぴったりの文章が、とても素敵だ。

でも、でも、私はあえて吉田さん二苦言を呈したいのです。
決して嫌いな作家さんではない。むしろ彼の小説がへこんだ心に作用して元気になったことだってある。
だけど、なんといえばいいんだろ?
私には、吉田篤弘という人はもっともっと骨の太いものが書けるのじゃないかと、ずっと思っているんです。

本職の装丁家としてのセンス、小説家としての文章・・どちらも本当に素晴らしい。
それでも、小説に関してはどこか食い足らない。吉田篤弘の力量はこんなもんじゃないでしょ、と思うからだ。
彼の小説、悪くないんですよ。全然悪くない。
だけど表層的というか、上っ面をさらりと撫ぜただけって印象があって、読後感はいいんだけど、後から思いだすと何も思いだせない。
空気感が伝わってくるだけ。
もったいないなぁ。

・・これはけっして悪口ではないのです。期待しているんです。
この「台所のラジオ」はタイトルどおりの雰囲気がどの小説にも流れていて、好きだった。

要はもうちょっと、「ガツン」が欲しいだけ。
もっともあまり「ガツン」だと吉田篤弘じゃなくなるというファンもいるでしょうけどね。

posted by 北杜の星 at 07:35| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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