2016年09月01日

川上弘美「このあたりの人たち」

26の掌編小説集。
帯文に「8年の歳月をかけ、丹精込めて創り上げた」とある。
8年かかったのは、これだけにかまっていたわけではないからだと思うのだけど、まぁ8年は8年なんでしょう。
掌編とはごく短いという意味で使われるが、ショートショートというジャンルとどう違うのか?どちらが短いの?

おそらくは東京近郊の架空の小さな町。その住人が「このあたりの人たち」だ。
どこにでもいる人もいるが、いやいや、絶対にこういう人はいないというケースもある。
何編かは川上弘美らしく、現実をポンと超えたお話し。

小さな町だから、みんながどこかで繋がっている。
再々登場するのが「かなえちゃん」。
小さなころから意地悪で、中学生になると暴走族、不純異性交遊の「不良」だったが、パリに行ってファッションデザイナーとなり、「郷土の誇り」に変身。
アメリカ帰りの一家の娘は最初、ドリーとロミと呼ばれていたが、いつの間にか緑と浩美になっていた。
ある子だくさんの一家は末子を育てられなくて、町の各家が3カ月に一度くじ引きでその子を引き取り育てるという。その子がまたワルの大飯喰らい。

とにかく26の物語の多様さには驚く。そしてどれもがすこぶる面白く味がある。
でもこれはやはり川上弘美。
ストーリーだけではない。文章が本当に素晴らしい。
登場人物につかず離れずの距離で、クスリと可笑しく、どこかシンと描いている。
こんな短い小説でもけっして手を抜かない。

この本は本の佇まいが美しい。
文字配列、余白、表紙・・本が美しいとなんかうれしいですよね。
ただ残念なのは、この値段。この薄さこの小ささで税抜き1500円はないでしょう。
小さな物語なのだから、値段も小さくしてほしい。
これでは、本離れ、したくなりますよ。
posted by 北杜の星 at 07:14| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | カ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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