2016年09月19日

山田詠美「珠玉の短編」

タイトルを見てぎょっとした。
自分の本に「珠玉」ってつけるか?
私が読んでいる時にたまたまこれを見た夫も「スゴイ題だな」と言った。
まさか、いかに奔放な山田さんでもそれはないでしょ。

はい。なかったのです。
このタイトルには深い(深くもないか)意味があったのです。
夏耳漱子という小説家は文豪の格調高さをあえて避け美文などもってのほか、エログロ小説を書いている。
ほとんどの人は眉をひそめるのだがカルト的な存在として、熱狂的なファンもいる。
そんな彼女が文芸誌に短編を載せたのだが、その目次の彼女の短編タイトルの横に、あろうことか編集者が「珠玉の短編」と添え文を付けていたのだ。
自分の小説が「珠玉」!?
驚き腹立たしい彼女は編集者をののしるが、しだいに「珠玉」に絡め捕られていき、文章文体が変化する・・
(作家にとっての「言葉」というものがどんなものか、「あとがきにかえて」を読むとよりわかりますが)。

滑稽なのだが作家という職業の苦労も垣間見れて、笑い飛ばせない気の毒さがひしひしと。。
でもやっぱり笑っちゃえるところが、山田詠美のスゴイとこ。
私のまわりで山田詠美を読まないひとってずいぶんいる。
多分彼女のあのイメージで作品を判断しているのだと思う。
だけど彼女の小説は本当に繊細で、性を描いてもそこには人間の根っこがあるため、決して薄汚くないのだ。
大好きな大好きな作家だ。

その山田詠美が第42回川端康成文学賞を受賞した。
川端賞は優れた短編に贈られる賞で、日本の文学賞のなかで私がもっとも評価している賞。(あの西村賢太がこの賞を欲しくて欲しくてしょうがないと聞く)、
その受賞作の「新鮮てるてる坊主」もこの本のなかに収録されている。

たしかに「新鮮てるてる坊主」はオチといい、物語といい心理描写といい緻密で、その緻密さがラストの怖さに繋がっているのだが、面白い短編だった。
これを受賞作にした選考委員のセンスに脱帽します。

11の短編は概して「奇妙な小説」というジャンルになるのでしょうね。
こういうのが好きな私は思う存分堪能しました。
posted by 北杜の星 at 08:05| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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