2016年09月26日

室井佑月「息子ってヤツは」

室井佑月の本を読むのはこれが初めて。
でも彼女がテレビのコメンテイターとして出演しているのを見る限りでは、ストレートに意見を述べ、それが私とほぼ同意見なこともあって、わりと好きな女性である。
彼女が作家の高橋源一郎と結婚してて子どもを産み、すぐに離婚というのは知っていたのだが、その息子さん、今はすでに高校生だとか。
シングルマザーとして仕事をしつつ子育てをしてきた彼女の、これは子育てエッセイである。
それも「お受験」エッセイ。

私に子どもがいないせいか、「お受験」にはなんとなく反発を覚えるところがあって、なにも小さな時から塾へ行かせなくてもと考えるのだが、室井さんには室井さんの考えがあったようだ。
それは、親として子に残せるものは教育だけ。前を向いて「自分は何のために生れてきたのか」を問い生きていける人間になってほしいと願ったからだ。
それで小学3年生のときから学習塾へ通わせ、お尻をたたき、中学受験に挑んだ。

でもやみくもなお受験ママではないんですね、彼女。
一人息子を盲愛してはいるが、盲信しているわけではない。自分のこともちゃんとわかっている。
息子は自分という母親といつも一緒ではよくないと、地方の中・高一貫校にターゲットを絞ったのである。
こういう理性は本当にリッパ。

とはいえ、息子は勉強嫌い。ゲームをしたり、ダラダラしてなかなか勉強に熱が入らない。(まぁ、これが普通だと思うのだけど)。
だけど、ここが彼女のユニークな点。
「勉強しろ」とは言わない。(最初は言ったようだが)。
「あんたって、勉強すきだから」という言葉を繰り返し言い聞かせたのだ。
学校から帰ってふてくされながら宿題をしているときには、[宿題をするのは当たり前と思っていても)、「へぇ学校から帰ってきたのに、また勉強しているの?ほんと、勉強が好きなんだから」とつぶやいて見せる。
するとあらあら、「オレって、勉強好きなのかも」と言うようになった!

この洗脳戦略は室井さんが銀座の高級クラブのホステスをしていたのきに学習したのだそうだ。
男って、洗脳されやすいらしい。
息子にもこれは成功したようだ。
(でも、母息子のバトルはこれからもおおいに続く。。)

巧いなぁ、室井さん。
私も夫にこの戦法をつかってみようかな。「あなたって本当はすごーく料理が上手なのね」とか毎日言っちゃって。。

中学合格、地方から休みに帰って来てもあの年齢の男の子が母親にやさしい言葉をかけてくるはずがない。
返事すらしないもの。内心「うるさいなぁ」「面倒だなぁ」と思っているのが、ときおり言葉や態度に表れる。
それでもやはり、そこは母と息子。絶対に切っても切れない「ナニカ」は横たわっているような気がして、息子っていいじゃん!と思う。
現在彼女の息子はソフトボールとギターに夢中な高校一年生。
これから大学受験が控えているが、もう母親の言う通りにはならないでしょう。自分で自分の道を考え見つけるしかない。
そのための「道」をつけてあげるのが親の役割。そしてその役割をしっかり果たした室井さんだと私は思います。

エライし、巧い。人間操縦法に長けているひとですね、室井さんは。
でもそれ以上に、息子を愛し、そして信じているのだと思う。なんやかや言っても、二人の信頼がつたわってくるエッセイでした。
子育中の方にはお勧めです。
posted by 北杜の星 at 07:45| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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