2016年10月11日

桜木紫乃「裸の華」

本を読む楽しみのひとつに、知らない世界を知るというのがある。
今回桜木紫乃の「裸の華」では、ストリッパーの世界を知ることができた。
ストリップについてはこれまでも昭和のいろんな作家たちがその世界を垣間見せてくれているが、ストリッパーの「踊り」をメインとしたものは、あまりなかった気がする。
この本には踊りに命を燃やす元ストリッパーが主人公で登場する。
ストリーの展開については「こうなるんだろうな」が見え見えで、あまり私の好みではないのだけれど、前作「霧(ウラル)」よりは数段いいと思う。読後感も悪くはない。

ストリッパーだったノリカは舞台で怪我をし、舞台を降りた。誰にも告げずストリッパーとしての仕事を始めた北の街か振り出しに戻るつもりで店を始めることにした。
クリスマス・イブの日、不動産屋の男と店を下見し、ここに決める。
店はダンスシアターNORIKAろいう看板で、二人のダンサーを募集するのだが、不動産屋の男が推薦する瑞穂とみのりの若い二人を雇うことに。
驚いたことに不動産屋の男はバーテンダーとしてノリカの店で働くようになった。彼は有名なバーテンダーだったらししが、どういう理由からか東京を離れて北の街に居たのだった。
ダンスシアターNORIKAは、丸顔でいつも笑顔の愛嬌ある瑞穂と、ぶすっとして不機嫌そうな、けれど踊りが素晴らしいみのりの二人のパフォーマンスが評判となり、だんだん客が増えてくる。
しかし二人のダンサーは若い。
恋愛や他からのオーディションのオファーなど、ノリカが店を継続するには問題となるような出来事が次から次へと起こってきて。。

物語より、ノリカのストリッパーの踊り手としての矜持のあり方が興味深い。
ストリップ小屋に集まる客たちの「見たい」という欲望は、裸の女性の一点に集中する。ストリッパーとしてその願いを叶えてあげつつ、でも自分の踊りは踊りとして見せ場を作りたいノリカ。
卑猥な動きの中で、踊りの凄さを見せると、客は「見たい」ことなど忘れてしまって、ただノリカの踊りそのものを見るようになる。
それこそノリカの踊りの真骨頂なのだ。
そこに、下品さだけに陥らない、ぎりぎりの品がある。
もちろんそのためには、踊りのための節制と練習は欠かさない。
客の喜びそうなCDの一曲を選び、自分で振付をし、衣装を着ける。ストリッパーとして気概が生まれる。

ストリッパーの客にも、追っかけがいるんですね。
舞台のノリカに絶妙なタンバリンを振っていた男性が、ノリカのもとを訪れる。死期がせまったその男のためにノリカは踊る。
その男がとってもカワイイ。彼のタンバリンは歌舞伎の「成駒屋ぁ~」という声のようなものなんでしょうね。
バーテンダーの竜崎はいかにもワケアリそうなのだが、そうしたワケはわからないままでいる方が、ミステリアスでいいのかもしれない。

結末がどうなるかは、読んでのお楽しみ。
ストリップ小屋って今でもあるのかな?
昭和の頃には、ちょっとした温泉地にはあったものだけど。

私が覚えているのは、どこだったか忘れたが、小屋のポスターだか看板に、出演のストリッパーの名前が「アンジェラ」とあったこと。
ふーん、アンジェラか。男の欲望を満足させる天使さんなんだな、と、そのネーミングに感心した。
だけど女の私からすると、裸を見るのがなんでそんなにおもしろいんだろ?と不思議なんですけどね。
でもノリカのような踊りの名手のストリッパーさんがいれば、ちょっとその技を見てみたくなるかも・・

桜木さん、初期のような小気味よくてそのなかに人生の悲しさがある、そんな小説が読みたいです。
NORIKAの悲しみも人生もわかるのだけど、私が求める桜木小説ではないみたい。
posted by 北杜の星 at 07:25| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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