2016年10月18日

木内昇「光炎の人(上)」

ライブラリーで借りて読んでいるので、上巻を読み終えても下巻がまだ届かない。そのため上巻をここでまずご紹介することにします。

木内昇は大好きな作家だ。
彼女(昇という名前ではあるが女性です)の作風は大きく二つに分かれる。
一つは「茗荷谷の猫」や「よこまち余話」のような、どこか幻想的な作品で、私はこちらのほうが好みなのだが、もう一つのいわゆるしっかり資料を積みつつ書くストーリーで読ませる小説も、読ませどころがしっかりしていて悪くない。
「光い炎の人」は明治から昭和の初めにかけての物語で、「技術とは何か?技術者とは何か?」というテーマが重苦しいほどに迫ってくる力作。

時は明治。四国徳島の寒村の三男坊に生れた主人公の音三郎は、他の兄たちとは何かにつけて秀でていた。父も彼にはどこか遠慮がちだった。
煙草栽培をする農家は貧しく、音三郎は口減らしのために近くの町の煙草の葉を刻む工場に、職工として勤めることになった。
朝早くから晩遅くまで働かされながら、音三郎は絶えずより効率よくよりよいものを作り出すことを考え、すくない給料を貯め自費で材料を調達して、機械の試作品作りに励んでいた。
そんな彼は「電気」を見て以来、これからの世は電気だと直感、とくに無線にのめり込むようになる。。

音三郎の志は高かった。
そこには金銭欲や名誉欲ではなく、ひたすら技術をを高めたいという意思と意欲だけがあった。
しかしその意欲が優先し、ともすると人間に対して酷薄になってしまうこともあった。。

音三郎をとりまく人々も魅力的だ。
品のないミツ叔母、幼馴染で同じ工場で働く利平、音三郎に技術を教える研輔、音三郎のライバルの金海・・
日露戦争、社会主義活動と大逆事件など当時の日本の社会情勢も加わって、重厚感が醸し出されている。
理系に強い人なら、音三郎の開発する技術が理解できるだろうから、より楽しめると思う。

だんだんときな臭くなる日本が進もうとする方向に、音三郎がどう関わるのか。
下巻が待ち遠しいです!

posted by 北杜の星 at 07:52| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | カ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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