2016年11月14日

辻原登「籠の鸚鵡」

昭和のバブルが始まる少し前、紀州和歌山の小さな町で繰り広げられる人間たちの欲望と思惑。
「冬の旅」以来、人間の暗部を描き続ける辻原登だが、今回もノヴェル・ノワールに徹している。
なにが彼をこのテーマに駆り立てるのか?
「冬の旅」の底なしの暗さには絶望しか感じられず、読後感が重くやりきれなかったのだが、「籠の鸚鵡」は最後の最後のほのかな灯りに、安堵のため息をついた。

関西国際空港建設の埋め立て土砂にまつわる事件とドラマ。
不動産業者、暴力団抗争、バー、役場の出納室長・・
こう並べるだけで、絵に描いたようなストーリーが思い浮かぶだろうが、そう、そのまんまのお話なのだ。
ただこれには単なる架空のお話ではなく、リアリティがあるのがスゴイところ。
緻密な資料で、現実の事件を参考にしているのだろう。暴力団の抗争は当時の山口系と一和会そのものだ。
それと、和歌山出身の辻原だから書ける和歌山の土地土地の風景もこの作品の魅力乃「一部だ。(湯治の温泉宿なんて、いいんです)。

詐欺、不倫、恐喝そして殺人。
こう展開するんだろうなの通りにドンドンと犯罪はエスカレートしていく。
ミステリーのような展開なので、あまりストーリーは書かないが、さすが作者の筆には力があって、ハラハラドキドキで読ませられる。
これだけ怒涛のごとくの話なのに、どこかシンと静かな気配があって、品が悪くない。
これが辻原登という作家の個性なのだろう。


だけど犯罪小説が続いているので、ここらあたりで仕切り直しの、ちょっと明るく軽いものを読みたいな。
引き出しをたくさん持っている辻原登だから、自由自在に書けるはず。
一息つけさせてくださいい。
posted by 北杜の星 at 07:51| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | タ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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