2017年01月12日

森見登美彦「夜行」

これ、今月決まる直木賞の候補作品なんですね。
候補になる前に借り出していたので、予約はまだ全然入っていなかくてラッキーだった。

十年前に京都の鞍馬の火祭に出かけた英会話スクールの学生たち6人連れ。
そのなかの一人の女子学生が突然いなくなり、以来ずっと行方不明のまま。
今回主人公の呼びかけで、残りの5人がまた鞍馬に集まった。

それぞれが語る旅先での経験談は、いつも誰かがいなくなる。
尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡・・
みんなの共通項は旅先いで偶然見た、岸田道生という画家の版画「夜行」だった。
その版画には、暗い夜の中で一人の女性が手を振っているというもの。あたかも、あちらの世界に読んでいるような構図の絵だ、

話には結論がない。
確かにあったことかも、どうかすると定かではない。
生活しているこちらの世界と行方の知れなくなった彼らの世界が、ポジフィルムとネガフィルムのように陰と陽に思える。
しかし夜の闇は強く濃く、「世界はいつも夜なのよ」という言葉が、謎を深くする。
最後まで着地点はははっきりしない。

不可思議さに惹きつけられる作品だった。
説明のつかないことが説明のつかないままに、納得できる感じ。
ラストの主人公に起きることが、どんでん返しだとしたら、ますますすべては霧の中。
生にはぽっかり空いた穴がある。その怖さを知るひとには、これは単なるファンタジーとは受け取れないだろう。
私はこういうお話が大好きなので、これ、存分に楽しめました。

でも、直木賞にはちょっと弱いような気がするのだけど。。
まぁ賞はこれだけが対象となるものではなく、これまでの評価を含めてのものだとしたら、森見さん、そろそろ受賞してもおかしくない時期ではある。

posted by 北杜の星 at 07:46| 山梨 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック