2017年01月31日

宮本輝「草花たちの静かな誓い」

久しぶりに読む宮本輝。
私の感覚では宮本輝は芥川賞というよりも直木賞に近いストーリー・テラーだ。
彼の書いたもののなかでは初期の「錦繍」が好きだ。
最初、蔵王のロープウェイで別れた元妻と出会う場面の文章の素晴らしさ。小説の導入部としてもとても映像的だった。
あの文章を読んで、「この人は残る小説家になるだろうな」と生意気にも思った。
その文章に関しては小川洋子がエッセイのなかで、同じようなことを書いて賞賛していた。
宮本輝の小説はあまり読んでいないが、彼のシルクロード紀行文「ひとたびはポプラに臥す」は大の大のお気に入りで、何度も読んだ。
新聞社のカメラマンたち、彼の息子、通訳との旅は、まだまだシルクロードが整備されていない時代、けれどパキスタンを抜けてフンザまで抜けられたある意味、平和な時代の旅だった。
今もときおり読み返すことがあるが、全然古くなっていない。

さてこの「草花たちの静かな誓い」。
ミステリー仕立てなので筋はあまり書かない方がいい。でもかなり前の部分で誰が誰なのかはわかるのだけど。
ロスアンジェルス在住の菊枝叔母さんが日本旅行中に突然亡くなった。
甥の弦矢が渡米すると、莫大な財産が彼に遺されているのがわかった。(家を含めると45億円!)
しかし6歳のときに白血病で亡くなったとばかり思っていた菊枝叔母さんの娘は、じつは生きていることを知る。
娘のレイラは誘拐されたのだった。
そこには隠された事実が。。
(この事実がどうにも落ち着きの悪い読後感を導いて理うと思う)。

この小説はロス近郊の高級住宅地が舞台。
その高級さがどんなものかの取材を、宮本輝派丹念にしたのだろう。そこに住む知り合いがいたのかな?
地元不動産屋の評価額が10億円以上という豪邸。
そこで庭を任されている日系の庭師やぷ得トルコ人女性のハウスキーパー、レイラを探すよう依頼した私立探偵、弁護士・・
脇役は少ないが、しっかりした人物像をつくっている。
アメリカの法律もいろいろ知ることができて興味深い。

菊枝叔母さんはその豪邸の庭を草花でいっぱいにするつもりだったようだ。
彼女はいつも娘に、草花には人間と同じような意識があるのだと話していた。
弦矢も庭の花々を見ながら、草花は宇宙の一部ではなく、宇宙ものものだと実感する。

エンターテイメントとして大いに楽しめる小説。
菊枝叔母さんの作って冷凍保存してあるスープの美味しそうなこと!
私も今日あたり、かぶのスープをつくろうかな?といっても菊枝叔母さんのような本格的ではなく、超簡単なものだけど。
(トロリ感を出すために冷ご飯をちょっと入れて煮込み、フードプロセッサーにかけるのがコツ)。
posted by 北杜の星 at 08:10| 山梨 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック