2017年05月18日

小池昌代「黒蜜」

点字で読んだ本。
少し読むスピードが上がって、4巻にもなっている本だが20日間ほどで読了できた。
本はある程度の速度で読まなければ気が抜けてしまうので、速くなったのはうれしい。
先生は中途失明者の点字読スピードは、1ページ5分が目標とのこと。会話の多いスカスカな頁ならクリアできるが、ぎっしりと文章が詰まっている頁だと、6〜7分かかることもある。
まだまだですね。

さて、この小池昌代の「黒蜜」、印字本でも読んだことがある。
詩人である小池昌代らしい子どもを主人公とした短編集だ。
今回気がついたのだけど、14編の短編のなかの子どもたちは8歳という年齢の子が多い。8歳でなくてはならない作者なりの意図があるのだろう。

子どもにだって、孤独や倦怠や虚無を感じる心は持っているが、その幼さゆえに言語化ができない。
小池昌代はここでそうした子どもたちの代弁者となっている。だからとうてい子どもが使わないような言葉が出てくるが、つまりはこの本は子どもが主人公であっても、あくまで大人が大人のために書いた本ということだ。

素晴らしく面白かった!以前読んだときよりも何倍も心に沁みた。
どれもいいのだが今回は「馬足街」がもっとも印象に残った。
8歳の峰は小学校の早朝の掃除当番を光二郎と一緒にすることになった。
峰はだんだん大人っぽい雰囲気の光二郎を好きになる。
当番が終わる時、光二郎は峰に自分の住む地域にお好み焼きを食べにこないかと誘う。
そこは「馬足街」と呼ばれる「川向う」で、大人たちはその街のことをいつもひそひそ声で話している。
馬足街に行く途中には川にかかる「赤い橋」があって、そこで彼らは待ち合わせをする。
光二郎の自転車の後ろに乗って着いたお好み焼き屋は不思議な店だった。
大人が誰もいなくて、子どもたちが作り手と食べる側に交互になるというシステムだった。

お腹一杯食べ、作り、峰は満足して、光二郎にまた自転車で送られて家に帰るのだが、赤い橋を渡る時、今まで居た場所が本当にあったのか、またこれから戻る自分の家が本当にあるのかという想いにかられる。。
こちらとあちらを分ける赤い橋はまるで彼岸と此岸の結界のようだ。
恐ろしい幻想はでもどこか甘やか。

繊細な感性と上質な文章が相まって、本当に素敵な読書が楽しめました。
posted by 北杜の星 at 07:31| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | カ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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