2017年06月01日

原田マハ「モネのあしあと」

作家になる前はキュレーターをしていた原田マハ。
その彼女がフランス印象派画家モネについて書いたこの本は、学術的なものではないけれど、彼女の「モネが好き!」が心地よく伝わってくる一冊だ。

文明開化で西洋の文化が入ってきた同じ時期に日本に紹介されたフランス印象派絵画。
日本人にとっての西洋絵画といえば、それはもう、印象派なのだ。
バロックでもルネサンスでもない。とにかく学校の美術の授業で教えられる画家のほとんどが印象派。
これほど日本人になじみの深い絵画はないだろう。
そのなかでも最近、モネの名前を見聞きする機会が多いような気がする。
モネの「睡蓮」のあの光。どこか日本画に似通ったところがあるのか、とても日本人好みだ。

この本には原田マハが都内の小さな美術館に勤めていた時に初めて見た、ホンモノのモネの絵との出会いが書かれていて(じっさいはこれ、口述らしいが)、そのアパレル会社のオーナーの絵画コレクションの一つだったらしいが、強いインパクトを受けたようだ。
それはずっと彼女のなかに残ったのだろう。
後に作家として書き、直木賞候補作品となった「ジヴェルニーの食卓」にもあるように、印象派のなかでもモネに対する想いが続いているようだ。

日本人は幸運なんですね。
印象派絵画を買い集めた先見の明を持つ先人たちがたくさんいてくれたおかげで、外国に出かけなくてもそれらを見ることができる。
彼女も書いているが、今どんなに中国やアラブの大金持ちが印象派絵画を求めようとしても、不可能らしい。

昔の日本の富豪は投資のためでなく、文化を愛するゆえに、それらを購入していたのだ。
日本とフランスの間のコネクションがそうあったとは思えないが、少しのそのコネクションはしかし、太いものだったようで、モネから孫のようにかわいがられた日本人富豪もいたようだ。
そのおかげで、現在日本中にはおよそ30点ものモネ作品があるというからすごい。

ブリジストン美術館(東京)、大原美術館(岡山)、ひろしま美術館(広島)、サントリー美術館(東京)、松岡美術館(東京)、笠間日動美術館(茨城)、アサヒビール大山崎山荘美術館(京都)では庭園に咲く睡蓮の花とモネの「睡蓮」の競演が楽しめるという。
また現代美術館においてもモネを所蔵していて、地中美術館(香川)や河村美術館(千葉)でも見ることができる。
(まぁ、日本ではコンテンポラリー作品だけではお客さんは来ないから、目玉作品としてお客を牽引するためにも必要なのかもしれない。そういう場合の印象派として、ルノアールじゃぁね、やはりモネということになるのではないだろうか)。

香川の直島の地中美術館にはモネが数点あって、モネの庭が作られていて散策することができるが、モネの「睡蓮」の部屋に入るには靴を脱がなくっちゃいけない。
あれがどうもイヤで、外国人の見学客もずいぶん多いのだから、あれは一考する方が良いのじゃないかと思う。

でもこんなにモネが日本にあるなんて、、これはうれしい驚き。
キュレエーターの彼女なので、モネの絵画説明もちゃんとあります。
「風景の一部を切り取る構図、筆跡を残す絵筆の使い方、モチーフの極端な抽象化(これこそが現在でもモネのファンが多い理有だと私は考えている)・・などをどのようにモネが手に入れたかが「モネのあしおと」を読めば、アート作家原田マハらしく書かれている。
posted by 北杜の星 at 07:33| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック