2017年07月13日

篠田節子「夜のジンファンデル」

ジンファンデルって何だ?と思っていたら、ワインのための葡萄の品種のことだそう。
これは篠田節子の短編集だが表題を除くと、全体に流れる空気は不穏でどれもホラーっぽい。
表題だけが恋愛もの。
ホラーといっても岩井志麻子のような土着的なおどろおどろしさではなく、人間の心の底に巣くう恨みなどのマイナス感情があぶり出されている。
私、ホラーが好きなんです。ミステリーはラストのつじつま合わせが「そりゃ、ないでしょ」というものがかなりあって、どうも私の性に合わない。
でもホラーにはどこか人智を超えるものに対する畏れが感じられて、いいんです。

今回のこれ、15冊目の点字本。
点字でホラーを読んだらどう感じるかの実験のつもりだったのだが、皮膚感覚って怖いです。目で読むよりもっと怖かった。
ちなみに私の点字の最終目的は町田康と笙野頼子。
町田康のあのはちゃめちゃな文章が指ではどうなるか?笙野のシュールさはどうか?
彼ら二人が難なく読めるようになったら、自信がつくと思う。それも長編がいいですね。

この本のなかでは中編の「コミュニティ」がもっとも印象的だった。
作品としての読みでもこれが一番。
この本は文庫本化されているが、その文庫本には「コミュニティ」とタイトルが変更されているらしい。

一人息子がアトピーで病院通いすることが多くなり、妻は専門職を休んだり早退することが頻繁になってリストラされてしまう。夫も業績不振で給与が減った。
そのため都心のマンションからずっと郊外の古びた賃貸公団住宅に引っ越したのだが、その団地には独特の空気が流れていた。
プライドの高いキャリアウーマンだった妻はその団地の専業主婦たちとは付き合うつもりはなかったが、以前の友人たちから見捨てられ、彼女たちと交際するようになる。
そこでは誰の子、誰の妻、誰の夫という境界がなく、まるで一つのコミューンのようだった。
心地よいのか、気味悪いのか。
迷ううちにも周囲からじわりと囲い込まれていく彼ら。。

不気味なコミュニティなのではあるが、こういうところって案外、プリミティヴな社会の結びつきがあるのかもしれないと、相互扶助の良さもあるじゃない?って感じが読むうちにしてきたりして、ここの住人がそれでいいなら、それでもいいじゃないのという気になる。
男女関係以外においては、そう悪くないかもと考える私がおかしいのか?とちょっと自分に不安になるのだけれど。。
こうしたコミューンって宗教的なものとか、一時流行ったヒッピーの集団とか、似たようなものはあったと思う。

篠田節子の文章は指がよろこびました。きちんとした私好みの硬質な文章でした。
posted by 北杜の星 at 07:38| 山梨 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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