2017年07月26日

内田洋子「ミラノの太陽、シチリアの月」

「イタリアのしっぽ」を面白く読んだ夫が、内田洋子第二弾として借りたのがこの本。
彼は夜寝る前のベッドでしか本は読まないので、昼間に私が読んでみた。
いくつかの章をを読んで、「あれ、この話し、知ってる。。」。
調べてみると、もうずいぶん以前にこの本、読んだことがあった。
その時は内田洋子という人をまったく知らなかったし、特別な印象も残らなかった。
でも今回は「内田洋子を読みたい」という強い気もちで読んだから、心にずっしりときた。

冬は霧で何も見えなくなるミラノにも、太陽が輝くこともある。
明るいシチリアにも夜はある。
みんなが知るイタリアとは別の顔のイタリア。
それはイタリア在住30年以上、しかもジャーナリストの目で見るイタリアだ。
自分の情緒はできるだけ排してイタリア人を見つめる内田洋子の文章は対象に溺れることなく、イタリア人の心をすくいあげている、
この距離感というか間合いがとても好きだ。

それにしてもフットワークのいい人。
友人に呼ばれると、すぐにそこに赴く。のみならず、そこに住んでしまったりもするのだから驚く。
ミラノの街の運河の前の集合住宅に住む彼女は(現在はミラノではないようだが)、いつもリグーリア州の海辺を恋しく思っている。
「そうだろうなぁ」と思う。
厳しい寒さのミラノの冬、イタリアン・リヴィエラと呼ばれるリグーリアは冬の平均気温15度前後だ。州都ジェノヴァの西は南フランス。
陽光が輝いている。
ジェノヴァの南には美しいリアス式海岸が延びていて、ポルトフィーノや世界遺産で有名なチンクエテッレなどがある。
リゾート地もあるが、観光地化されていない漁村もまだあるのではないだろうか?

私たちはもう20年くらい前にイタリアをオートバイ旅行しようと思い立ち、日本からイタリアにバイクを船で送ったことがある。
船が着きバイクを引き取ったのがジェノヴだったので、あのあたりをツーリングした。
きれいな海岸線の風を受けて快適な旅だった。ポルトフィーノは思っていたよりもはるかに小さな港で、「これが世界的なリゾート地?」とびっくりしたが、海を臨む高台には瀟洒な邸宅が並んでいた。
ランチ時だったがレストランはどこも目が飛び出るほど高くて、次の港まで走りそこの海辺で食べたのだが、魚介のパスタが美味しかったなぁ。
あのあたりに住むのはたしかに悪くない。
ジェノヴァは大都会で買い物に便利だし、トスカーナも近い。
(でも内田さん、結局はリビエラには家を買わなかった。もっと山方面の一軒家に決めたそうだ。海は最近ではすごい混雑で、とても静かには暮らせないとか。イタリアは本当に観光客がすごくて、彼女が『考える人」に連載した「イタリアン・エキスプレス」を読むと、ヴェネツィアにはもうとてもとても行けそうもないというくらい、毎日が大混雑。通りを歩くと人の体に触れるほどらしい。観光地ではない普通の田舎にでも行かないと、ゆったりできない国になってしまった。世界遺産がもっとも多い国だから仕方ないのかもしれないけれど、ため息がでてしまう。)

この本のなかの「祝宴は田舎で」を読み、これまでの私たちのイタリア旅行を思い出した。
田舎を訪れて、そこの美味しいレストランを見つけて食事をするのが好きな私たちだが、そういうレストランは週末ともなると、誰かの「お祝いパーティ」をしていることがよくあった。
卒業祝いの若者たち、洗礼式後の食事会、金婚式みたいなカップルのお祝い・・
田舎のレストランといっても、ローマやフィレンツェから車を飛ばして食事に来る客がいるくらいの店なので、味は保証付きだ。
そんなテーブルを見ると、前菜が3皿、パスタ・リゾットなどが3皿、主宰が2皿、そしてデザート、スプマンテや赤白ワイン、食後酒がエンドレスに続く。
総カロリーは4000くらいになるのではないだろうか。男も女も区別なく平らげるその食べっぷりを見ると、こちらはシュンとなってしまうほどだ。

そんな祝宴だが、「母の日」には当たらないようにしてください。
「母の日」は普段のマンマの労をねぎらって、どこの街のレストランも満員で、旅行者はランチ難民となってしまうからだ。
レストランに入って断られ、うらめしそうに中を覗くと、マンマが真ん中で喜色満面、みんなに囲まれているのが見える。

「ジーノの家 イタリア10景」で日本エッセイスクラブ賞を受賞した内田洋子。
今度はそのエッセイを読んでみます。イタリア事情やイタリア人の心の機微がよくわかると思います。

posted by 北杜の星 at 07:15| 山梨 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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