2017年11月07日

アナスタシャ・マークス・デ・サルド「戦争がつくった現代の食卓」

この本の原題は、COMBAT=READY KITCHEN。
アメリカ陸軍の研究機関であるネイティック研究所が開発した戦争での食品が、いかなる需要で生れたか、またそれらの食品が企業によって民間に浸透したかの経緯が様々なエピソードとともに書かれている。
とても興味深い一冊。

どうも人間は平和時よりも戦争の時の方が、創造力が高まるようだ。
それは食べものに限らない。
古くはワテルローの戦いのウェリントン・ブーツ。これは将軍ウェリントンが作ったとされるゴム長靴のこと。
またトレンチコートは第一次世界大戦の時に、塹壕で闘うう戦士を寒さや汚れから守るためのコート。今では男性は冬になるとスーツの上に来ているし、女性は春コートとしてお洒落に着ている。アクアスキュータムはトレンチ・コートで有名。(すごく値段が高い)。
そして今ではあるのが普通になったコンピューターだって、元は軍事目的で作られたものだ。

戦場での戦士たちのための食事はどんなものか?
まず運送しやすい形状でなくてはならないし、気象条件を満たすものでなくてはならない。
火が使えないことも多いし、腐りやすいものは敬遠される。すぐに食べる必要だって起きる。

だから缶詰、レトルト、パウチに入ったもの、シリアル、パン、粉チーズやプロセスチーズが開発されたという。
これらの食品、どこのスーパーにも並んでいる食品だ。
まぁ、健康には良くないとされる食品がほとんど。

この本の著者はフード・ライター。常に安全な食べものを家庭の食卓にのぼらせたいと考える主婦でもある。
子どもが学校のカフェテリアで食べるのを拒否し、自らお弁当を持たせることにしたのだが、自分では自信たっぷりで使っていた食品が、じつは、カフェテリアでの食品とそう変わり内ことに気付いた。
弁当に使っていた加工食品に疑問や不信感を持った彼女は、それらの食品の由来を調査し始めた。
そしてわかったのが、「ネイティック研究所」のことだった。

膨大な参考文献に支えれて書かれたこの本、たくさんのことを私たちに考えさせてくれる。
これはアメリカだけではもちろんなく、日本の食卓事情にも大きく関わることなのだ。
開発された経緯を知ると、「うーん、なるほど」と感心しつつも、これが日常となっていることにちょっと唖然としていまう。
便利さって、所詮、こういうことなのね、と。
もともとが食品の全性より利便性で開発されているのだから、健康に良くないのは当然かもしれないのだが。。

でもこれを読んで、日本の自衛隊の食事のことを考えた。
3・11の救援活動の際の彼らの食事の貧しさを何かで読んで、「せめてもっと、なんとか美味しいものを食べさせてあげたい」と一生懸命に働く彼らが気の毒だった。
食べることは活力の最大の基本。
被災者が苦しんでいるのだからというのはわかるけど、それにしてもかわいそうだった。
先の太平洋戦争においても、日本軍と米軍の物資の隔たりはあまりにも大きく、「これじゃぁ、負けるのは当たり前」と思えたそうだ。

かなりの力作。読むのに1週間近くかかりました。読んでよかった。

posted by 北杜の星 at 07:50| 山梨 | Comment(0) | ア行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。