2017年11月13日

森絵都「出会いなおし」

この森絵都、とても素晴らしい。
森絵都といえば長編というイメージが私にはあって、これまでいろいろ読んではきたが、どうもどこかしっくりこないところがあって、「悪くはないんだけど、単に私との相性の問題かも」と諦めていたのだ。
でもこれ、短編小説が大好きな私は大満足。
6つの短編に共通するものは、タイトルのように「出会いなおし」。ストーリーはさまざまだが、過去に出会った人と別れて、また時を経てで会う、というお話し。
これまでの森作品とはかなり違う雰囲気を持っていて、落ち着きが感じられる。

長い人生には、人との別れが必ずある。
いっとき仲良く密な付き合いがあったのに、少しずつ齟齬が生まれて関係が途絶えてしまったり、何も特別なことなどなかったのに、いつのまにか消えてしまったり。。
誰にもそんな知り合いがいることだろう。
私にももちろんいる。
ときおり昔日のそんな友人たちのことを思い出すのは、私がそういう年齢になったからか?
熱心に辿れば、彼らの消息はわかるのだけれど、それほどの熱意はなく、ただぼんやりと思い浮かべているだけ。
だけど心のどこかで、「出会うべき人には必ずまた出会える」と信じている。

長い時間の後で出会いなおすと、驚くことがある。
「この人、こんなに良い人だったかな?」と。なんかすごく大きくなっていて、自分の上を通りすぎた時間とその人を通り過ぎた時間を較べてしまう。
そして「あぁ、いろんなことがあったんだなぁ」と、そこから新たな付き合いが再開することもある。
人と人とのつながりの深さ、面白さです。

この短編集には、「出会いなおすべき人たちが出てくる。
過去のいやな時間を共有したクラスメートもいれば、出会いなおして結婚した人もいる。
どれも素敵な物語なのだけど、「青空」が印象的だった。出会いなおしは生きている人だけじゃなく、亡父や妻という場合だってある。
30代半ばの妻を亡くし、小学3年生の息子を妻の実家に預けて育ててもらうことになった男性。
その息子と車に乗っていて、前のトラックが大きなベニヤ板を落とす事故にあう。その瞬間のほんの2秒くらいの間に、亡父の言葉、妻のことが頭をよぎるのだが、説明をするところはしっかりしていて、説明のない部分でも心情が表現されているところは見事だと思った。

父とドライブしながら、父からのどんな問いかけにも「うん」としか言わない息子。
父と息子のコミュニケーションがうまくいうっているとは思えない。
でも最後、事故で助かって彼が息子に言う。
「大丈夫か}
「うん」
「まいったな」
「うん」
「ママが守ってくれたんだ」
「うん」
あたりまえのように恭介はうなずき・・

「うん」としか応えない息子の最後の「うん」に、母を亡くした喪失感、母を恋う気もちがあふれているし、父だけでなく息子の方も父とどう向き合っていいのか戸惑っていたのだとわかる。
とにかくこの森絵都には感激でした。
短編としての完成度が高く、それでいてサラリとべとつきがなく、変な作為が感じられない。
秋の読書として、大いに楽しみました。
posted by 北杜の星 at 07:33| 山梨 ☀| Comment(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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