2007年10月08日

山本夏彦「一寸先はヤミがいい」

山本夏彦が逝って3年。
20年以上「週刊新潮」で「夏彦の写真コラム」を連載し、名コラムニストとして名を馳せた人だった。
そのコラムは博識はもちろんだが、彼特有の皮肉や毒舌もあいまって、人気があった。

私は必ずしも彼とは意見を同じくするものではなかったが、それでも彼の歯に衣着せぬ率直さは、自分の言葉に責任を持つ人という印象で好ましかった。
今回何気なくこの絶筆となった「一寸先はヤミがいい」を読んでみて、今更ながら惜しい人を亡くした思いが強い。

誰の意見でもない自分の意見を、誰にも媚びずはっきりと書く。
これは、そう簡単なことではない。しかもそれを長く続けることはなおのこと。
最近は、右向け右、みんなが同じ方向に顔を向け、同じことを言わなければならないような風潮がある。
やたら正義漢ぶって「正論」を吐く。
本当にそれは自分の「正論」なのか?と言いたくなる。
山本夏彦なら、そこのあたりを、口を斜めに歪めながら、反論してくれそうなのだが・・
この本の中でも、創価学会、正岡子規、夏目漱石などをバッサリと斬っていて、痛快だ。


人って、時には「叱られたい」のじゃないだろうか。
私が幼い頃は、赤の他人でも、いけないことをしたら叱ってくれたものだ。
近所には、「怖いおばさん」「怖いおじさん」が必ずいた。
今そういう人はいないよなぁ。
ましてや大人になって本当の意味で叱ってくれる人なんていやしない。
山本夏彦は、社会でそういう役目をしてくれていた・・だから彼のコラムを読むと、「叱られる」快感に、首をすくめながらも酔ったのかもしれない。

胃がんが転移して、いよいよいけなくなった時にも、ペンを持つ右手には決して点滴を打たせなかったそうである。
好き嫌いを超えて、「気骨の人」に敬意を表したい
posted by 北杜の星 at 09:12| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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