佇まいのとても美しいエッセイ集だ。
1969年から75年にかけてワルシャワ大学に留学していた彼女は、現代ポーランド文学の日本語訳者としてだけでなく、小説やエッセイも書いている。
最近、大病をされたと聞くが、こんなに素敵な本を出されたことに安心している。
つかだみちこの名はシンボルスカの詩の訳者として知られている。(高校の教科書に乗っていたことがある)。
シンボルスカはポーランドで初の女性ノーベル賞受賞者の詩人である。
静かななかに反体制の強い意思が感じられるシンボルスカの詩は、一度読むとずっと心に残るものだ。
この本の「引き出し」というのは彼女の詩の一節からのもの。
数年前に広島に旅行したときに、ポーランドからのツアー観光客たちと同じホテルだった。
エレベータの中でそのなかの数人と一緒になったので、おはようと英語で言いあったのだが、一人の男性がたどたどしい英語で「What do you know about Poland?」と訊いてきた。
その時私はどういう理由からかとっさに「シンボルスカ」と答えていた。
一瞬、エレベータには沈黙が流れた。
そしてその後でみんなが「ブラボー」と拍手をした!
彼らはみんな、とってもうれしそうだった。
その顔を見て、あらためてシンボルスカが敬愛される国民詩人であることを確認した。そしてシンボルスカを教えれくれたつかださんに感謝したのだった。
つかださんはポーランド文学の日本語約だけでなく、日本の詩、例えば茨木のり子さんの詩をポーランド語訳にもしていて、それはポーランドの有名な文芸誌に掲載されているそうだ。
この本には1969年以来ポーランドに足繁く通う彼女ならではの視点で、ポーランドの風景や親交のある人々が描かれていて、楽しいエピソードをたくさん載っている。
つくづく、私はポーランドのことを何も知らないんだなと思う。
英語圏などではポーランド人に関するエスニック・ジョークが語られることが多く、ともすれば笑いの種にされている。
でも私には、ポーランドや旧チェコスロヴァキアの人々は不屈の魂を持ち、気高く生きて来た人というイメージを持っている。
その厳しい地理的、歴史的なものを感じさせれたのが、この本の�V章の「ポーランド文学と文化の話し」だった。
ギュンター・グラスのことが書いてあった部分。
ギュンター・グラスはドイツ人と思いこんでいたのだが、彼が生れた土地は現在はポーランドなのだ。複雑な国と国との間でグラスは生きてきたのだ。
グラスの文学と言っても私は2冊しか読んでいないのだが、その暗い深みがなんともいえない作家である。
大江健三郎がノーベル文学賞を獲った時のコメントで、「グラスもクンデラもまだ受賞していないのに、僕がもらうとは。。」と話していたが、グラスは後に受賞した。
チェコのミラン・クンデラはいまだ受賞しいないのが、私はすごくすごく残念に思っているだのが。。
日本ではあまり知られていないポーランドという国。
これを読めば「行ってみたいな」と思うことだろう。
ワルシャワだけでなくポーランド各地のことを知ることもできるのがいいです。
つかださん、素敵な本をありがとう!

